病院で一番良く利用される点滴である生理食塩液の濃度は、0.9%(Na154mEq/L、Cl154mEq/L)です。
人間の体液に近い濃度で100mlの水に0.9gの食塩(NaCl)が溶けています。つまり人間は、約1gの食塩を食べたら約100mlの水分が必要となります。その分の体重が増えるため、10gの塩分を摂取したら1㎏体重が増えることになります。 食塩を多く摂りすぎるとノドが渇きますが、これは人間の生理的な反応です。
人間は体に貯まった塩分を薄めようとして飲む水の量が増えます。この水分量が増えていくと(つまり食塩を摂りすぎると)顔のむくみや足のむくみとして症状に現れます。水分量(体液量)が増えすぎることは、心臓にも大きな負担となり、血圧上昇の一因となります。
塩分で血圧が上昇するのは、塩分排泄能力に関わる遺伝子なども関係し、個人差があります。食塩を摂ると血圧が上昇し、減塩すると下降する食塩感受性の人間と、食塩で血圧が影響されない食塩非感受性の人間が存在します。しかし、食塩非感受性の人間でも、腎臓に障害を指摘されている場合は、塩分制限が特に重要となります。腎臓の働きが低下している場合は、塩分排泄能力も低下しているからです。
高血圧は国民病とも言われています。厚生労働省の調査によると、高血圧症と推定される日本人は、全国4000万人以上で、日本人の3人に1人は高血圧とされています。高血圧の人の割合は、歳をとるごとに増え、50代で3人に1人、 60代以上では2人に1人が、高血圧となっています。加齢とともに腎臓の働きは低下していきますので、食塩非感受性であっても、高齢者の場合は食塩制限を積極的に行う必要性があります。
腎臓内科外来では、「ユリンメートP」などを用いた蓄尿評価(1日の塩分摂取量等)及び食事指導を行います。
気になる方は、腎臓内科外来で1日の塩分摂取量を確認することをお勧めします。